「諦めずに向き合ったら、また祖父の名前が見えた」
10年ぶりに掃除したら、コケで文字が消えていた
K.Mさん
父が倒れてから、誰も行けなくなった
祖父母が眠るお墓は、愛知の山あいにある霊園です。子供の頃は毎年お盆と彼岸に家族で行っていました。でも父が10年ほど前に脳梗塞で倒れてから、遠方のお墓に行ける人間がいなくなってしまいました。
「いつかきれいにしてあげなければ」と思いながら、仕事と介護でその「いつか」はずっと来ませんでした。
今年の春彼岸、父がリハビリ施設で落ち着いてきたこと、そして今年で祖父の三十三回忌にあたることを母から聞いて、「今行かないといつ行くんだ」と思い立ちました。
墓石が緑と黒に覆われていた
霊園に着いて、正直、言葉を失いました。墓石全体が緑色のコケと黒ずみに覆われていて、刻まれた祖父の名前がほとんど読めない状態でした。台石には灰白色のごつごつした汚れ(後で調べたら地衣類というものだとわかりました)まで付いていました。
10年放置するとこうなるのかと、自分の不義理が目に見えるようで、しばらく立ち尽くしていました。
持参したのは霊園でもらったタオルとバケツだけ。「これでどうにかなるのか」という不安と、「やれるだけやろう」という気持ちが半々でした。
石材店の方に教わった正しい方法
翌日、霊園の管理事務所に事情を話すと、隣の石材店の方を紹介してくれました。
石材店の方に状態を見てもらうと、「緑コケと黒カビはご自分でも落とせますよ。ただし、台石の地衣類と長年の黒ずみはプロにお任せいただいた方が確実です」と言われました。
その場で教わったのは、「カビキラーはNGだということ(石が変色する)」「高圧洗浄機も使ってはいけない(目地が壊れる)」「石材専用のコケ取りスプレーを使い、柔らかいブラシで優しく擦る」という方法でした。
石材店の方に台石の地衣類除去と仕上げを依頼し(費用は22,000円)、表面の緑コケと黒ずみは私が自分でやることにしました。
半日がかりで、祖父の名前が見えてきた
ホームセンターで石材専用コケ取りスプレーと豚毛ブラシを買い、翌朝から作業開始。
スプレーを吹きかけて10分待ち、ブラシで優しく擦る。水で流す。この繰り返しです。最初はなかなか落ちず焦りましたが、2回目、3回目と繰り返すうちに、緑コケが少しずつ落ちていきました。
午後になって、ようやく墓石の竿石(縦長の部分)の汚れが落ちてきたとき、祖父の名前の彫刻が見えてきました。あの瞬間の感覚は今も忘れられません。「ごめんね、長くほっといて」と、自然と声に出していました。
全部で4時間ほどかかりましたが、最終的に石材店の方の仕上げも加わり、墓石は見違えるようにきれいになりました。
コケは「行けていなかった時間」の証だった
帰り際、石材店の方に「来年からは春と秋の彼岸前に一度水で洗い流すだけでもだいぶ違いますよ」と教えてもらいました。防水コーティング(10,000円)もお願いして、再発防止の処置もしてもらいました。
コケは汚れではなく、行けていなかった時間の積み重ねなんだと思いました。でも、それを恥じるよりも、気づいたときに動けばいい。今回そう感じました。
母に「祖父の名前、ちゃんと見えたよ」と報告すると、電話口で泣いていました。
来年の春彼岸は、母と一緒に行こうと思っています。
[▶墓石のコケ・黒ずみを安全に除去する正しい方法](/guide/32)
※ この体験談は、編集部が一般的なご相談事例をもとに再構成したものです。登場する人物名・地名・具体的な状況はすべてフィクションであり、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。