借地権付き実家の売却|地主との交渉・専門業者の選び方|譲渡承諾料の相場まで
借地権付き実家の売却には、地主の譲渡承諾と承諾料(更地価格の10%程度)が必要です。売却方法は4つ(地主に買取・第三者に譲渡・地主と同時売却・専門業者買取)。地主との交渉でつまずく3つのポイントと、専門業者を使うメリットを完全解説します。
目次
借地権とは何か?親世代に多い「旧法借地権」とは
借地権とは、他人の土地を借りて、その上に自分の建物を建てる権利のことです。親世代から相続した実家に多い「借地権付き物件」は、土地は地主のもの、建物だけが自分の所有という権利関係になります。
旧法借地権と新法借地権の違い
| 種別 | 施行時期 | 借地人の保護 | 期間 |
|---|---|---|---|
| 旧法借地権 | 1992年7月以前 | 非常に強い(更新拒絶は事実上不可) | 木造20年以上、RC造30年以上 |
| 普通借地権(新法) | 1992年8月以降 | 強い(更新可能) | 30年以上 |
| 定期借地権(新法) | 1992年8月以降 | 弱い(期間満了で終了) | 50年以上 |
親世代に相続した実家は、多くが旧法借地権です。長期間にわたって借地人の権利が強く保護されているため、相続した側にとっては資産価値の高い権利となります。
借地権付き建物の市場価格
借地権付き建物の価格相場は、所有権物件の60〜70%程度です。土地の所有権がない分、銀行融資が難しく、買い手も限定されるため価格が下がります。
「借地だから売れない」と思い込んでいる方が多いですが、借地権そのものは法律で保護された立派な財産権です。適切な手続きを踏めば、十分に売却可能です。
借地権付き物件は普通の物件と何が違う?
借地権付き物件の売却は、所有権物件の売却とは大きく異なります。違いを理解しておきましょう。
違い1:売却に地主の承諾が必要
借地権を第三者に譲渡する際、民法612条により地主の承諾が必要です。地主に無断で売却すると契約解除(建物収去・土地明渡し)の対象となるため、必ず事前に承諾を得る必要があります。
違い2:譲渡承諾料が発生する
地主に承諾を得る際、慣習として「譲渡承諾料」を支払います。相場は更地価格の10%程度で、例えば更地評価3,000万円の土地なら300万円が目安です。
違い3:住宅ローンが組みにくい
借地権付き建物は、銀行が担保評価を低く見積もるため、買主が住宅ローンを組みにくくなります。借地権専用の住宅ローンを扱う金融機関もありますが、選択肢は限定的です。
違い4:価格相場が所有権の60〜70%
土地の所有権がないため、買主の心理的ハードルは高くなります。市場価格は所有権物件の60〜70%程度が一般的です。
違い5:地代の支払い義務が買主に承継される
借地権を売却すると、買主が地代を地主に支払い続ける義務を承継します。地代の金額・支払い方法・更新期間などは契約書に明記されており、買主候補に正確に開示する必要があります。
借地権の売却は、地主との関係が良好かどうかで難易度が大きく変わります。日頃から地代の支払いを遅延せず、礼を尽くした関係を築いておくことが、円滑な売却の前提になります。
借地権付き実家を売る4つの方法は?
借地権付き実家を処分する方法は、大きく4つに整理できます。
方法1:地主に買い取ってもらう
地主に「借地権を買い取ってほしい」と提案する方法です。地主側には「完全所有権として活用できる」「地代管理の手間がなくなる」などのメリットがあります。価格は更地価格の40〜60%程度が相場。地主との関係が良好で、地主側に資金力がある場合に成立しやすい方法です。
方法2:借地権を第三者に売却する
地主の承諾を得て、第三者(個人または業者)に借地権を売却する方法です。価格相場は所有権物件の60〜70%。一般買い手は住宅ローンが組みにくいため、現金購入できる買い手か、借地権ローンを組める買い手に限定されます。
方法3:地主と協力して同時売却(底地+借地権)
地主の「底地(借地権が設定されている土地)」と借地人の「借地権」を同時に第三者に売却する方法です。買主は完全所有権を取得できるため、市場価格に近い金額で売れます。売却益を地主と借地人で按分するため、両者の協力関係が必須です。
方法4:借地権専門の買取業者に売却する
借地権を専門に扱う買取業者に売却する方法です。地主との交渉も業者が代行してくれるため、借地人側の負担が大幅に軽減されます。価格は他の方法より低めですが、確実かつスピーディに現金化できます。
地主との関係が良好なら方法1または3、関係が冷ややかなら方法4が現実的です。お墓のミカタが借地権付き実家の売却経験者45人に調査したところ、「専門業者の活用が有効だった」と回答した割合は76%にのぼりました(お墓のミカタ調べ、2025年12月実施)。
地主との交渉でつまずく3つのポイントは?
借地権付き実家の売却で、地主との交渉が難航するケースは少なくありません。よくある問題と対処法を整理します。
ポイント1:譲渡承諾料の金額交渉
地主によっては、慣習相場の10%を大幅に超える譲渡承諾料を要求してくる場合があります。更地価格3,000万円の土地で「500万円払え」と言われるケースなど。
対処法:
- 過去の判例・類似事例を提示する
- 弁護士・借地権専門業者の同席を依頼する
- 話し合いで解決しない場合は「借地非訟」の申立てを検討する
ポイント2:承諾そのものを拒否される
「借地権の譲渡は認めない」と地主が頑なに拒否するケースもあります。地主側の思惑として、「借地人を選びたい」「将来的に底地として一括売却したい」などがある場合があります。
対処法:裁判所に「借地非訟(借地権譲渡許可の申立て)」を行うことで、地主の承諾に代わる裁判所の許可を得られる可能性があります。手続き費用は10万〜30万円程度、期間は半年〜1年です。
ポイント3:地代の値上げを要求される
「譲渡を認める代わりに、地代を月3万円から5万円に値上げする」など、譲渡を機に地代の引き上げを要求されるケースもあります。
対処法:地代の値上げは地主と借地人の合意が必要です。周辺相場を調査し、相場から大きく外れる値上げは拒否することが可能です。合意できない場合は調停・訴訟になります。
地主との交渉は、感情的にならず冷静な対応が重要です。難航する場合は早めに専門家(借地権専門業者・弁護士)に相談するのが得策です。
借地権専門業者を使う4つのメリットは?
借地権付き実家の売却で、専門業者の活用が推奨される理由を整理します。
メリット1:地主との交渉を代行してくれる
最大のメリットは、地主との譲渡承諾交渉を業者が代行してくれることです。借地人が直接交渉すると感情的になりがちな問題も、第三者である業者が間に入ることで冷静な交渉ができます。
メリット2:訳あり借地権でも買取可能
地主との関係が悪化している、譲渡承諾が得られない、地代滞納がある――こういった訳あり借地権でも、専門業者なら買取対応してくれるケースが多くあります。
メリット3:即金・確実・スピーディ
査定〜契約〜現金化までが圧倒的に早く、最短2〜4週間で売却完了します。地主との交渉が長引くケースでも、業者が間に入ることで進捗が早まります。
メリット4:法律・税務面のサポート
借地権の売却は、地主・借地人・買主の三者間の権利関係が複雑です。専門業者は法律・税務面のサポート(弁護士・税理士・司法書士の連携)を行ってくれるケースが多く、安心して任せられます。
「借地権専門」を謳う業者でも、実績・専門性に差があります。買取実績・営業歴・宅建免許の処分歴を必ず確認しましょう。
売却にかかる費用と税金はどのくらい?
借地権付き実家の売却にかかる費用と税金を整理します。
売却にかかる費用の目安
| 項目 | 費用相場 |
|---|---|
| 譲渡承諾料 | 更地価格の10%程度 |
| 仲介手数料(仲介の場合) | 売却価格の3%+6万円+税 |
| 登記費用 | 5万〜10万円 |
| 印紙税 | 1万〜6万円 |
| 司法書士報酬 | 3万〜10万円 |
譲渡所得税の仕組み
売却益が出た場合、所得税と住民税が課税されます。
- 長期譲渡所得(5年超保有):20.315%
- 短期譲渡所得(5年以下保有):39.63%
被相続人(親)の所有期間も通算されるため、相続したばかりでも長期譲渡所得が適用されることが多いです。
節税特例の活用
借地権付き実家でも、相続税の節税特例の対象になります。
- 相続税の取得費加算特例:相続から3年10ヶ月以内の売却で適用可能
- 被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除:一定条件で最大3,000万円控除
詳細は税理士に相談することをおすすめします。
節税特例の適用を受けるには「相続から3年10ヶ月以内」という期限があります。長期にわたる地主との交渉で期限を過ぎないよう、スケジュールを意識して進めましょう。
借地権売却でよくあるトラブルと対策は?
借地権付き実家の売却で多いトラブル事例を紹介します。
トラブル1:法外な譲渡承諾料を要求される
「更地価格の30%払え」など、相場を大幅に超える要求を受けるケース。
対策:弁護士・借地権専門業者に相談。必要に応じて借地非訟の申立て。
トラブル2:地主が承諾を拒否
そもそも譲渡を認めない、と地主が拒否するケース。
対策:借地非訟の申立てで裁判所の許可を得る。期間は半年〜1年、費用は10万〜30万円。
トラブル3:口頭合意を後から覆される
買主が決まった後、地主が「やっぱり認めない」と翻意するケース。
対策:譲渡承諾を書面で取得してから売買契約を進める。口頭の合意は後からトラブルになることがあります。
「父が亡くなり、東京都内に旧法借地権付きの実家が残されました。地主は隣家のおじいさんで、最初は『譲渡は認めない』と頑なに拒否。借地権専門業者に間に入ってもらい、3ヶ月の交渉の末、譲渡承諾料200万円で合意。最終的に1,500万円で売却できました。自分一人では交渉は無理だったと思います」(S.Hさん・50代・東京都)
よくあるご質問
Q借地権付き実家は売却できますか?
Q借地権の売却価格はどのくらいですか?
Q地主への譲渡承諾料はいつ・どう支払いますか?
Q借地権専門業者と一般の不動産会社、どちらに依頼すべきですか?
Q地主が相続放棄を認めず困っています。どうすれば?
監修
お墓のミカタ編集部
お墓をどうするかで悩む方に向けて、選択肢と判断材料を分かりやすくお届けすることを目指しています。記事内の法的手続きや費用に関する情報は、公的機関の資料や業界資料を参考に作成しておりますが、最新の情報は必ず各自治体・関連事業者にご確認ください。
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