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認知症・判断能力が低下したときのお墓問題|成年後見・家族信託との関係

認知症が進行すると「本人の同意が必要な手続き」が法律上できなくなります。墓じまいを検討するなら判断能力がある間に進めることが重要です。成年後見人は財産管理はできますが祭祀(墓じまいの決定)は権限外です。成年後見・家族信託との関係を解説します。

12分で読めます最終更新: 2026.03.21

この記事の監修者

お墓のミカタ 編集長

お墓のミカタ編集部

墓じまい 完全ガイドシリーズ

墓じまいの全体像・手続き・費用を一から確認する

目次

  1. 1.認知症になるとお墓問題でどんなことが起きるのか?
  2. 2.成年後見制度でお墓の手続きはどこまでできるか?できないこととは?
  3. 3.家族信託はお墓問題に役立つか?認知症になる前にできる備えとは?
  4. 4.認知症になる前に家族でやっておくべきことは何か?
  5. 5.認知症とお墓問題を相談できる専門家はどこにいるか?

認知症になるとお墓問題でどんなことが起きるのか?

親や祖父母が認知症を発症したとき、お墓に関して予期しない問題が起きることがあります。

【よくある状況】

  • お墓の名義人(管理者)が認知症になり、手続きの判断ができなくなった
  • 墓じまいをしたいが、名義人本人の同意が得られない・確認できない
  • 管理料の引き落とし口座の変更手続きができなくなった
  • 親が認知症になる前に墓じまいを進めておくべきだったと後悔している

【なぜ認知症になると手続きが難しくなるのか】

日本の法律では、「判断能力がない人」が行った法律行為(契約・申請等)は無効になる場合があります。そのため、認知症が進行した後に「本人の同意」が必要な手続きを進めようとすると、法的な問題が生じることがあります。

【早めに確認しておくとよいこと】

  • お墓の名義人は誰か
  • 名義人の判断能力は現在どの程度か
  • 墓じまいや改葬を本人が望んでいるか、家族で話し合えているか

「まだ早い」と思っているうちに動けなくなるケースが多いため、気になったときに少しずつ確認しておくことが大切です。難しく考えず、まず家族間で話し合うところから始めましょう。

成年後見制度でお墓の手続きはどこまでできるか?できないこととは?

成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などにより判断能力が低下した方を法的に支援する制度です。家庭裁判所が選んだ「成年後見人」が本人に代わって財産管理・法律行為を行います。

【成年後見人がお墓に関してできること】

  • 管理料の支払い(財産管理の範囲内)
  • 名義変更に関する書類への対応
  • 改葬許可申請(行政手続き)の補助

【成年後見人がお墓に関してできないこと・難しいこと】

  • 墓じまいの判断・決定(「祭祀」に関する行為は成年後見人の権限外とされることが多い)
  • 宗教的な供養の実施・中止の決定
  • 改葬先の契約(財産の処分にあたるため、家庭裁判所の許可が必要になる場合がある)

【重要なポイント】

お墓・仏壇などの「祭祀財産」は、民法上、通常の財産管理とは別に扱われます。成年後見人は基本的に祭祀に関する決定権を持たないため、墓じまいなどの重大な決定は家族全員での合意形成が求められます。

成年後見制度は「財産を守る制度」であり、「家族の希望をすべて実現する制度」ではありません。制度の限界を理解した上で、弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

家族信託はお墓問題に役立つか?認知症になる前にできる備えとは?

「家族信託」とは、自分が元気なうちに、信頼できる家族(受託者)に財産の管理・運用を任せる契約です。成年後見制度と異なり、家庭裁判所の関与なく家族で柔軟に管理できるのが特徴です。

【家族信託でお墓に関してできること】

  • 信託財産(現金等)からの管理料の支払い設定
  • 将来の墓じまい費用を信託財産として確保しておく
  • 受託者(子供等)が管理を引き継ぐ際の費用の手当て

【家族信託の限界】

家族信託はあくまで「財産管理」の仕組みです。「祭祀承継(誰がお墓を引き継ぐか)」の問題は家族信託では解決できません。誰がお墓を引き継ぐかについては、別途家族間で話し合って決めておく必要があります。

【家族信託を活用する際の流れ】

1. 司法書士・弁護士・信託会社に相談

2. 信託契約書の作成(公正証書にすることが多い)

3. 信託口座の開設・財産の移転

4. 受託者(子供等)が管理を開始

費用の目安:信託契約の設計・書類作成で30〜100万円程度が相場です。

家族信託と成年後見制度はどちらが優れているわけではなく、状況によって組み合わせることもあります。専門家に相談しながら、家族にとって最適な方法を選びましょう。

認知症になる前に家族でやっておくべきことは何か?

認知症になってからでは難しくなる手続きがあるため、元気なうちに家族で確認・準備しておくことが将来の選択肢を広げます。「縁起でもない」と感じる方もいますが、準備は家族への思いやりです。

【確認・準備しておくと安心なこと】

お墓の名義人・管理者を確認する

現在の霊園との契約が誰の名義になっているか確認し、必要なら早めに名義変更を検討する。

墓じまい・改葬について本人の意向を聞いておく

「お墓をどうしたいか」「墓じまいをしてよいか」を、本人が意思表示できるうちに話し合っておく。記録(エンディングノート等)に残しておくと後の判断の根拠になります。

祭祀承継者を決めておく

誰がお墓を引き継ぐかを家族間で合意し、できれば文書化しておく。

墓じまいの費用を確保しておく

将来的に墓じまいが必要になった場合の費用(目安20〜200万円)を、誰がどう負担するかを話し合っておく。

遺言書・エンディングノートに記載する

お墓に関する希望(墓じまいをしてほしい、改葬先はここにしてほしい等)をエンディングノートや遺言書に書き残しておくと、家族の迷いを減らせます。

一度にすべてを決める必要はありません。家族の話し合いのきっかけとして、少しずつ確認していきましょう。

認知症とお墓問題を相談できる専門家はどこにいるか?

認知症とお墓の問題は、法律・福祉・宗教が複合的に絡むため、一人の専門家ではカバーしきれないことがあります。問題の種類によって相談先を使い分けましょう。

【相談先一覧】

問題の内容相談先
成年後見制度の利用家庭裁判所・社会福祉協議会・司法書士・弁護士
家族信託の設計司法書士・弁護士・信託会社
財産管理・相続全般弁護士・税理士・司法書士
墓じまい・改葬の手続き石材店・行政書士・霊園管理事務所
費用が払えない場合社会福祉協議会・法テラス(0120-007-110)
介護・認知症の相談地域包括支援センター(市区町村に設置)

【法テラスについて】

法テラス(日本司法支援センター)は、収入が一定以下の方を対象に弁護士費用の立替制度があります。「お金がなくて弁護士に相談できない」という場合でも、まず電話(0120-007-110)で相談してみてください。

一人で抱え込まず、まず「どこに相談すればいいか」だけでも確認してみることが、解決への第一歩になります。

よくあるご質問

Q親が認知症で墓じまいに同意できない場合、子供が勝手に進めてもいいですか?

A.お墓の名義人が認知症等で判断能力を失っている場合、法律上は本人の同意なしに重要な手続きを進めることは困難です。成年後見人の選任、または家族全員の合意形成が必要になります。弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

Q成年後見人はお墓の管理費を払えますか?

A.はい。管理料の支払いは「財産管理」の範囲内であり、成年後見人が対応できます。ただし、墓じまいなど祭祀に関する判断は成年後見人の権限外となることが多いです。

Q認知症の親が生前に墓じまいを希望していた場合、その意向は有効ですか?

A.法的な効力という点では、認知症が進行した後の意思表示は無効になる可能性があります。生前の意向をエンディングノートや遺言書に残しておくことで、家族の判断の根拠として活用できます。

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監修

お墓のミカタ 編集長

お墓のミカタ編集部

お墓をどうするかで悩む方に向けて、選択肢と判断材料を分かりやすくお届けすることを目指しています。記事内の法的手続きや費用に関する情報は、公的機関の資料や業界資料を参考に作成しておりますが、最新の情報は必ず各自治体・関連事業者にご確認ください。

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